男が涙を隠す時

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州選手権が始まってすでに13節(ゲーム)が過ぎた。
レギュラーは序盤過ぎからほぼ固定、リザーブ選手はベンチを温める試合が続く。
レギュラー選手の交代要員として、ベンチの選手に与えられるのは数少ないチャンス。
フォワードか攻撃的MFの選手なら、点を取ることが何物にも代え難い自分を売り込む手段となる。

2対1で迎えた試合後半の途中、1人の控え選手が攻撃的MFの交代要員として投入された。
今年から今のチームに所属しているが、13節の間レギュラー陣の控えに甘んじてきた。
得点力がある選手だが、今のチームでは、まだゴールを決めていない。

監督から与えられた指示はシンプル。前列のフォワード2人と一緒に、追加点を取って試合を決める。

1本目のシュート・・・・ポストに弾かれて頭を抱えた。
守備が続いた後、カウンター攻撃からゴール前に早いクロスが上がった。
カメラを構える僕の目の前を、ゴールラインを割る間際に放たれた矢のようなボールが飛んでいく。
守備側の選手がボールを弾くかと思った次の瞬間、ゴール前隅に飛び込んできた控え選手がダイレクトに決めた。

試合を決める追加点を決めた。

ゴールを決めた彼は、しばらく吠えた後、監督やベンチ、サポーターとは逆方向に走り始めた。
こちらに向かって走ってくる予想外の行動に、選手の姿がファインダーのフレームから大きくはみ出した。

彼が向かった先は、普段から仲がよい、右サイドバックのレギュラー選手の所だった。
2人はハイタッチを交わし、喜びを分かち合う。
喜びや、友情、男の意地、実に様々な感情がファインダーを通じて伝わってくる。

「写真に関わっていて本当によかった」と心から思える瞬間だ。
人に関わることの素晴らしさ、僕にとっては写真を通じてしか学べないことがある。

写真に関わるという、この上ない贈り物。その贈り物を通じて得た物をより多くの人々に伝えたい。
この数年、写真を撮り続けながら、心の中をかすめる想いだ。

チームメートと喜びを分かちあった後、彼は歩きながらしばらくの間、両手で顔を覆った。
手を除けた後の顔。その顔を僕は見ていないし、写真にも撮っていない。
フィールドの戦士に対して払いたい敬意があった。

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by Pombo_Brasil | 2011-05-18 12:07 | サッカー・プロ
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